何故1回の撮影でフォトブックを作らず、2回の撮影だとプレゼントなのか?

より思い出が膨らみ、内容の厚みが増します

「世界で一冊の本作り」でお作りするフォトブックは全24ページです。構成により、もちろん内容は変わりますが、少なくとも 40枚は写真が必要です。

 

一回の撮影で仕上がる写真は40〜70枚。被写体の方のご都合に合わせて変動する撮影時間、撮影中の移動、撮影チャンス(遊園地の乗り物などは特に)によって納品枚数が異なります。

 

出張撮影でお出しする写真はもちろんベストなクオリティーのものですが、それだけで本を作るよりも、何回か撮影した写真群の上澄みを使った方がより良い作品になります。また1回目と2回目だと場所や服装も異なります。このことが、フォトブックとなった時に、物語により厚みを持たせることになるのです。

 

またプレゼントの理由は出張撮影はもとより、フォトブックの文化が日本にはあまり浸透していないと考えているからです。確かにウェディングや七五三といったイベントごとのフォトブック作りと言うのは以前よりはるかに一般的になりましたが、写真本来の特性、「記録」と言う面で言えば、そこに自然に過ごした日常の記録はないわけです。私自身、これは非常にもったいないと思っています。自分が小さい時、両親がどんな顔で接してくれたか、家族でどんな風に遊んでいたか、パートナーとどんな風に過ごしたか・・・日常に帰る”タイムマシン”として活躍できるフォトブックはまだまだ普及していません。そこで、ご縁をいただいた方々には私のできることとしてフォトブックをお作りしてプレゼントすると言う企画を立ち上げたのが、本テーマです。

 

これらのことから「出張撮影(思い出・プレゼント用)」において、私は2回目の出張撮影を受けてくださった方に、「世界で一冊の本作り」をプレゼントしております。

 

ご理解のほど、何卒よろしくお願いいたします。

補足:「世界で一冊の本作りへの想い」

長文ですのでご興味のある方向けです

フォトグラファーにとって「作品を作る」というのは自分の感性と向き合い、それを追求していくことです。

 

そうして出来た作品を発表し、作品の感性に共感・支持してくれた人々に支えられて、それが形として残っていく。これはフォトグラファーとして、より大きな括りでいえば作家として、とても幸せなことです。私自身も旅をする中で風景写真はこの位置付けにあります。

 

そういう意味で作品づくりは「自分のため」という色が強いものです。なのでここで言う「作品づくり」は作っている最中、見てくれる人のことは未知であり顔もわかりません。自身のファンの方にさえ、自分が撮っている最中に「あの人ならこの作品を好きになってくれるだろうか?」などとは考えません。作品を見て共感・支持してくれるかどうかは作品を作った後に決まることであり、作品づくりは自分の中で完成する常に孤独なものだと思います。

 

その一方で私はこの出張撮影の仕事を始めると決めた時、「誰かに写真で貢献できたら」という想いが強くありました。「自分の好きなこと、そして得意なことで誰か他の人に貢献していく」という仕組みを組み立てたかったのです。

 

そして出会いに恵まれ、出張撮影をお仕事とする中で、「人を写した写真」が、映す人間と映る人間の関係性によっていかようにも変わると確信しています。つまり、両者が協力して写真を作っていくことになるわけです。現に出張撮影では「こうしてください」という指示はなく、被写体の方が自然に過ごされる中で一緒に過ごして、その様子を撮影するスタイルです。

 

この事実は、いわば「自分で作れてしまう今までの作品」とは異なるもので、まさに一期一会を軸にした「合作」です。

 

お作りする本はもちろん依頼者様のものですが、私自身にとって毎回が人生で一度だけ挑戦できる「顔を知る人のための作品作り」なのです。

 

この点は私にとってとても重要で、従来の「顔を知らない誰かのためではなく自分の感性のためだけの作品づくり」とは大きく異なります。そして、そのことが「誰かに貢献したい」と言うこの仕事を始めた理由と一致していることに気づきました。

 

そういった背景があって、「世界で一冊の本作り」は一切手を抜くことができません。クオリティー維持のためには全項目で記載した写真の数とレパートリーがどうしても必要です。長くなりましたが、これが2回以上撮影を行わないと本が作れない理由と企画の趣旨です。

 

長文・駄文を読んでくださり、どうもありがとうございました。

ぜひご依頼をお待ちしております。

文責

宮下 高明